2022年7月10日、町田福音集会
重田定義
ローマ
6:6 私たちの古い人がキリストとともに十字架につけられたのは、罪のからだが滅びて、私たちがもはやこれからは罪の奴隷でなくなるためであることを、私たちは知っています。
6:7 死んでしまった者は、罪から解放されているのです。
6:8 もし私たちがキリストとともに死んだのであれば、キリストとともに生きることにもなる、と信じます。
そうではなくて、様々な人生の嵐、例えば、病気や仕事や人間関係などと戦ったあげく、自分の無力さ、愚かさを徹底的に思い知らされ、疲れ果て、自我が砕かれ、『すべて疲れた人。重荷を負っている人は私のところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。』（マタイ11章28節）というイエス様の呼びかけに応えてみもとに行き、イエス様から差し出された御手にすがって、イエス様を救い主として信じて救われたのではないでしょうか？
救われた時、私たちは、もう自分を信頼しない、これからは自分のために十字架にかかって死んでくださったほどに愛してくださったイエス様だけを信頼し、イエス様におゆだねして生きようと、決心したのではないでしょうか？
はじめに読んでいただいたローマ人への手紙の中で、パウロが言っているのも、これと同様の意味であります。
ローマ
6:6 私たちの古い人がキリストとともに十字架につけられたのは、罪のからだが滅びて、私たちがもはやこれからは罪の奴隷でなくなるためであることを、私たちは知っています。
6:7 死んでしまった者は、罪から解放されているのです。
6:8 もし私たちがキリストとともに死んだのであれば、キリストとともに生きることにもなる、と信じます。
古い人とは、救われる前の自分であります。救われる前の古い自分は、イエス様と共に十字架にかかって死んで、罪の体から解放されたのだから、これからは、よみがえられたイエス様とともに、新しく生きると信じようではないか。このように、パウロは言っているのであります。
このように信仰とは生ける真の神様、そして、その神の御子イエス様を主と信じ、救われる前のように自分に信頼しているのではなくて、それからの人生を主にのみ信頼し、全てを主に委ねて、御心 に従って歩むことであります。しかし、イエス様は次のように言われました。
ルカ
9:23 ・・・・だれでもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。
どうして、イエス様はこのようなことをおっしゃってたのでありましょうか？
私たちは、イエス様を信じたときに、すでに自分が信頼できないことが、すでに自分の力は全く頼りにならないことが痛いほどわかっていたはずであります。ですから、私たちはイエス様とともに十字架にかかった時に、古い自分、すなわち、私たちの自我と決別したはずであります。ところが、現実には、私たちは、そう簡単に自分を捨てることはできないのであります。なぜでしょうか？
それは、信じたあとも、体は、この地上に置かれておりますので、その体に古い自分、すなわち、自我が生き残っているからであります。イエス様はそのことをよくご存知なので、このようにおっしゃったのです。ですから、私たちが本当にイエス様にお従いするためには、古い自分、すなわち、自我を意識的に捨てなければなりません。
主に信頼し、主に従う信仰の妨げとなるのは、まさにこの古い自分なのであります。しかし、そのことにどれほど私たち信者が真剣に心を痛めているでありましょうか？古い自分を捨てずに信仰生活を過ごしているような信仰は、みこころにかなわないことに気づいていない信者が、いかに多いことでありましょうか？
ここで、聖書から自分の力、自分の知恵に信頼した結果、不信仰を招いた例を見てみたいと思います。
まず、ヨブであります。ヨブは自分が優れた指導者として、また、義人として、その力を発揮して、人々に尊敬されていることを、自他ともに認めておりました。
そこで、神さまはヨブの信仰をお試しになるために、サタンによって、彼に試練をお与えになりました。そのため、彼は家族や財産、すべてを一瞬に失い、彼自身も大変な苦痛を伴う皮膚病にかかってしまいました。それでもなお、彼は自分の力による義を主張し、とうとう、
ヨブ
31:4 神は私の道を見られないのだろうか。私の歩みをことごとく数えられないのだろうか。
31:5 もし私がうそとともに歩み、この足が欺きに急いだのなら、
31:6 正しいはかりで私を量るがよい。そうすれば神に私の潔白がわかるだろう。
というような主を恐れぬ、不遜なことを言ってしまいました。しかし、神様がそのヨブを憐れまれ、ヨブに直接、語りかけられ、神ご自身が、いかに偉大な主権者であるかを、創造のみわざと全ての被造物をその御手におさめられる力によってお示しになり、
ヨブ
40:8 あなたはわたしのさばきを無効にするつもりか。自分を義とするために、わたしを罪に定めるのか。
と、彼に無条件で御前にひれ伏するように求められます。
自分を捨てて、主の御前に無条件で従う――これが信仰であります。ヨブは神様から与えられた自分の苦悩の原因については、まだ知ることができませんでしたけれども、主なる神様の権威の前に自我を砕かれ、御前に自分を蔑んで、塵と灰の中で心から悔い改め、
ヨブ
42:5 私はあなたのうわさを耳で聞いていました。しかし、今、この目であなたを見ました。
と、告白することができたのであります。
ルカの福音書の18章にも、自分を義人と自認してはばからない不信仰なパリサイ人の例えが記されていることは、多くの方々がご存知のことでありましょう。イザヤは、『私たちの義はみな、不潔な着物のようです』（イザヤ64：6）と言っておりますけれども、私たちもまた、自分の義が不潔な着物のようなものであることを全く気付かず、自分の義を神様にうったえるような無意識のうちに自分を誇り、主張する不信な態度をとってしまうようなものなのではないでしょうか？
イエス様の筆頭弟子と自任していたペテロも、幾度となく、自分の力、自分の判断に基づいて、不信仰に陥るという過ちを重ねました。その中の二つの例をあげてみましょう。
マタイ
16:21 その時から、イエス・キリストは、ご自分がエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえらなければならないことを弟子たちに示し始められた。
16:22 するとペテロは、イエスを引き寄せて、いさめ始めた。「主よ。神の御恵みがありますように。そんなことが、あなたに起こるはずはありません。」
16:23 しかし、イエスは振り向いて、ペテロに言われた。「下がれ。サタン。あなたはわたしの邪魔をするものだ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている。」
ペテロはイエス様のみこころが全く理解できず、ただあさはかな自分の判断だけで、イエス様がこの世に来てくださった最大の目的である救いのご計画を妨げるようなことを言ってしまったのであります。
また、イエス様がご自分が捕らえられることを弟子たちに予告された時に、ペテロは次のように言ってしまいました。
マタイ
26:33 ・・・・「たとい全部の者があなたのゆえにつまずいても、私は決してつまずきません。」
26:34 イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」
26:35 ペテロは言った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」
彼は、自分の信仰の強さを過信しておりました。その結果、イエス様が捕らえられた時、彼は人々に、『お前はイエスの仲間だ』と言われて恐れ、イエス様が予告された通り、三度、主を否むという不信仰な態度をとってしまったのであります。
こうして彼は、自分の信仰がいかに弱いかを思い知って、心砕かれて、涙を流し、悔い改めました。そして、イエス様が天に昇られたのち、御霊によって霊の目が開かれてから、殉教の死を遂げるまで、主にすべてを明け渡し、主を証しし続ける主のしもべとなったのであります。
のちに、彼が生まれつきの足なえを歩かせたとき、これは自分の信仰の力や信仰深さによるものではなくて、イエス様の御名、すなわち、イエス様の権威を信じる信仰によるものであると、人々に証しをしました。このように言うことができたのは、彼がもはや、自分は全く無力であり、御霊の力が自分のうちで働かれていることを、はっきり自覚したからであります。
私たち信者はどうでしょうか？ペテロは、その手紙第二の一章で、
第二ペテロ
1:19 また、私たちは、さらに確かな預言のみことばを持っています。夜明けとなって、明けの明星があなたがたの心の中に上るまでは（・・・・すなわち、これは主のご再臨の時を示しておりますけれども・・・・）、暗い所を照らすともしびとして、それに目を留めているとよいのです。
1:20 それには何よりも次のことを知っていなければいけません。すなわち、聖書の預言はみな、人の私的解釈を施してはならない、ということです。
1:21 なぜなら、預言は決して人間の意志によってもたらされたのではなく、聖霊に動かされた人たちが、神からのことばを語ったのだからです。
と、はっきりと記しております。
このように、彼の御霊によって書かれた聖霊のみ言葉は、すべて御霊に導かれることによってのみ、正しく理解できるものなのであります。私たちは決して、私的解釈、すなわち、自分の力で、自分の判断で聖書を読み、自分勝手にみことばを取捨選択したり、自分勝手な解釈をするという過ちを犯してはなりません。
また、私たちは主のしもべとして、熱心に福音を宣べ伝えようとします。このこと自体は御心にかなうことですけれども、一歩誤ると、主により頼むことなく、意識的、無意識的に自分の力で自分の知恵で伝道し、結果として誤った福音を宣べ伝えるという危険に陥ることがあることに注意しなければなりません。
このように、私たち信者に残っている古い人――自我は、主のみこころに従う信仰の大きな妨げとなり、そのような信者は、主のしもべとして用いられない者、役に立たない者になってしまうのであります。
また、信者の古い人――自我は、それだけではなくて、主の生けるみ体なる集会を構成する兄弟姉妹の不一致の大きな原因となります。パウロは初代教会の中に生じた信者の中の不一致を嘆いて、次のように言っております。
第一コリント
3:1 さて、兄弟たちよ。私は、あなたがたに向かって、御霊に属する人に対するようには話すことができないで、肉に属する人、キリストにある幼子に対するように話しました。
3:2 私はあなたがたには乳を与えて、堅い食物を与えませんでした。あなたがたには、まだ無理だったからです。実は、今でもまだ無理なのです。
3:3 あなたがたは、まだ肉に属しているからです。あなたがたの間にねたみや争いがあることからすれば、あなたがたは肉に属しているのではありませんか。そして、ただの人のように歩んでいるのではありませんか。
3:4 ある人が、「私はパウロにつく。」と言えば、別の人は、「私はアポロに。」と言う。そういうことでは、あなたがたは、ただの人たちではありませんか。
肉に属する人とは、イエス様を信じてもなお、御霊の導きを認めず、古い人である自我に従っている信者のことであり、御霊に属する人とは、古い人が死んで御霊に従うようになった信者であります。
パウロはガラテヤの2章20節――有名な箇所ですが――、『私はキリストとともに十字架につけられました。もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです』と証しをしておりますけれども、これこそ御霊に属するひとなのであり、このような御霊に属する信者が一つ御霊によって一致する集会こそが、主の生ける御体なる真の教会であります。そして、そのような教会を通して、主がご栄光を現わされるのであります。
したがって御霊に属する信者と主のみ体なる教会を構成する一つの器官としての自覚を固く保った信者であり、集会の信者同士の霊的な一致と集会を通して、主のご栄光が表されることを心から祈り求める信者なのであります。
では、いったいどうしたら信仰の妨げとなる古い人である自我を捨てることができるのでありましょうか？それは、ただひとつの道、すなわち、自我が砕かれることによってであります。しかし、それは決して自分の力でできることはありません。自分の意思でできることではありません。例え、苦痛を伴うにしても、ヨブやペテロのように主によって砕いていただくほかないのであります。
そうすれば、バプテスマのヨハネが、『あの方は盛んになり私は衰えなければなりません』と、ヨハネの3章30節で言っておりますように、私たち信者のうちに住んでくださっているあの方、すなわち、主の御霊に自分を明け渡し、より頼むものになることによって、初めてそれが可能になるのであります。
パウロがガラテヤの五章の16節から17節で、『私は言います。御霊によって歩みなさい。そうすれば、決して肉の欲望を満足させるようなことはありません。なぜなら、肉の願うことは御霊に逆らい、御霊は肉に逆らうからです。この二つは互いに対立していて、そのために、あなたがたは、自分のしたいと思うことをすることができないのです』と言っておりますように、私たちがうちに宿っておられる主の御霊にしっかりより頼んで歩めば、御霊ご自身が私たちの古い人自我を抑えてくださいませ。そのために私たちはいつも、霊の目を覚まして、主に結びつき、御霊により頼み、御霊の満たしをいただけるように、真剣に祈り続けることが必要であります。
最後に、みことばをお読みして終わりにいたします。
コロサイ
3:9 ・・・・あなたがたは、古い人をその行ないといっしょに脱ぎ捨てて、
3：10 新しい人を着たのです。新しい人は、造り主のかたちに似せられてますます新しくされ、真の知識に至るのです。
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